芥川龍之介の「近頃の幽霊」「都会で――或は千九百十六年の東京――」「文芸的な、余りに文芸的な」「続文芸的な、余りに文芸的な」に、一つの人名が書かれている。
ジアン・ダアク ……誰? 何分大正~昭和初期に書かれた文章だから、 現在とは外国人の人名表記が甚だしく違っているはずだ。 発音が日本語では(特に当時の表記の方法では)書き表しにくいものだったかも知れない。 「近頃の幽霊」に 何しろとあるから、おそらく昔のフランス人で、キリストやら天使やらを見たと称した人物なのだろう。 「都会で」では 若し看守(かんしゆ)さへゐなければ、馬に乗つたジアン・ダアクの飛び出すのに遇(あ)つても驚かないかも知れない。とされているので、さだめし乗馬が上手い人物だったのだろう。 「文芸的な、余りに文芸的な」には しかし正直に白状すれば、僕はアナトオル・フランスの「ジアン・ダアク」よりも寧ろボオドレエルの一行を残したいと思つてゐる一人である。とあるから、フランスの小説家・批評家アナトール・フランスがこの人物についてなにか書いているらしい。 「続文芸的な、余りに文芸的な」には ピカソはいつも城を攻めてゐる。ジアン・ダアクでなければ破れない城を。とある。 パブロ・ピカソのごとく革新的か、あるいは攻城戦に長けた人物だったらしい。 総合すると、 古い時代のフランス人で、霊的な出来事に遭遇して、馬に乗り、今までにないことを行い、城を攻めた人物。 ……ジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc)か? この綴りなら「ジアン・ダアク」と読めなくもないぞ……。 PR 「話」らしい話のない小説は勿論 従って、私は、この講義に於て、他の小説作法があって、それが、芸術小説、文壇小説を説くとするなら、大衆文芸の内へはその他の一切、即ち、科学小説、目的小説、歴史小説、少年少女小説、探偵小説等、総てを含めて、大衆の文字のままに定義していいと信じなくてはならぬ。 純文学(じゅんぶんがく)とは、大衆小説、あるいは小説一般に対して、商業性よりも芸術性・形式に重きを置いた小説の総称である。 じゅん‐ぶんがく【純文学】 じゅんぶんがく 【純文学】 人の形をしているが人の息吹は感じられないその「モノ」の その言葉を表す文字が、アレに書かれているわけでも刻み込まれているのでもない。 見えている光景の他に別の情景が脳裏に浮かび、聞こえている物音の他に声が聞こえる。 ☆更新部分直行 ☆いにしえの【世界】を最初から読む ☆クレール光の伝説シリーズメニュー ☆お姫様倶楽部Petitトップ 資料室(著作権法に抵触しない「お姫様関連文書」)に以下の2編を追加。
ボヘミアンスキャンダル 原題:A Scandal in Bohemia 著者名:サー・アーサー・コナン・ドイル 訳者名:coderati ホームズシリーズ最初の短編。 女嫌いのホームズ氏が、唯一敬意をもって「the woman(あの女)」と呼ぶアイリーン・アドラー女史(Irene Adler)が登場する一編。 民間諮問探偵シャーロック・ホームズの元に、覆面の紳士が依頼を持って訪れる。 依頼の内容は、さる高貴な人物のスキャンダルに関わる写真を「取り戻す」こと。 写真に写っているのは、皇太子時代のボヘミア王ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・シギスマンド・フォン・オルムシュタインと、当時の愛人アイリーン・アドラー嬢。 スカンジナヴィア王国第二王女クロチルド・ロスマン姫との婚約発表が近いボヘミア王にとっては、良縁の破談・国際問題となりかねない品だった。 期限は3日。 ホームズは失業中の馬丁に変装してアイリーンの身辺を探り、ゴドフリー・ノートンという弁護士が彼女に付いていることを突き止める。 アイリーンとゴドフリーの後を付けたホームズは、たどり着いた聖モニカ教会で、彼らの結婚式の立会人を務めることとなった。 その晩、浮浪者に変装したホームズは、ケンカ騒ぎに乗じてアイリーンの家への潜入。 ワトソンと示し合わせてニセの火事を起こし、目標物の在処を確認する。 作戦の成功を確信したホームズがベーカー街に戻ってくると、見知らぬ痩躯の青年が彼に挨拶をした……。 ブタ飼い王子 著者名:ハンス・クリスチャン・アンデルセン 訳者名:宮城麻衣 貧しく小さな国に、立派な王子がいた。 彼は皇帝の姫に求婚するため、素晴らしいバラと 造花の薔薇とオルゴールのナイチンゲールしか知らないらしい姫は、それらが「本物」であること知ると気味悪がって、贈り主に合うことを拒んだ。 自分の贈り物を認めて貰えなかった王子は一計を案じ、貧しい身なりに変装して宮殿へ行き、豚飼いとして雇い入れて貰う。 豚小屋で仕事をしながら、王子は不思議なだけれど何の役にも立たない玩具を作り出す。 それがどうしても欲しくなった姫に、豚飼いは姫に「100回のキス」を要求する。 どうしても玩具が欲しい姫は、泥まみれに汚れた豚飼いにキスをすることに。 ようやく86回目が済んだとき、その破廉恥な様子が皇帝に知れ、姫は豚飼い共々宮殿から追い出されてしまう。 国を追われるくらいなら、最初から小国の王子と結婚しておくのだった、と後悔する姫。 すると豚飼いは王子の正体を明かして曰く 「あなたはあのバラやナイチンゲールの価値も分からなかった。それなのにあなたは、あんなくだらないおもちゃのためにはブタ飼いにだってキスしようとする。その報いをいま受けるのです」 王子は自国の宮殿に戻ると姫の眼前で門を閉めきってしまうのだった。 今回のcoderati氏の翻訳のものと読み比べてみて、感じたことなどを。 まず冒頭の一文を比べてみましょう。 シャーロック・ホームズにとって、彼女は常に『あのひと』だった。他の呼称など、つゆほども聞かない。彼女の前ではどんな女性も影を潜める、とでもホームズは考えているのだろう。 シャーロック・ホームズがあの ちなみに、原文は以下の通り。 To Sherlock Holmes she is always THE woman. I have seldom heard him mention her under any other name. In his eyes she eclipses and predominates the whole of her sex. 物は試しと言うことでエキサイト先生に突っ込んでみると、以下のような文章を吐き出してくれました。 シャーロック・ホームズにとって、いつも彼女は女性です。 私は、めったに彼がいかなる他の名前の下でも彼女について言及するのを聞いていません。 彼の目では、彼女は、彼女のセックスの全体からおおい隠して、勝ちます。 (定冠詞の「THE」は普通はあえて訳さないものですから、融通の利かない機械翻訳だと妙ちきりんになっちゃうんですね) この二つ(+α)を見比べて、同じと感じるか別物と思うか……。 言っていることに差違はない。 でも私には何となく目線の置き方に違いがあるように見えるのです。 私の(恐らく酷く人並みからずれている)感覚で見ると、 大久保ゆう氏の文章は「ワトソン博士がホームズを観察してその心情を想像している」感じ coderati氏のそれは「ワトソン博士が我が身をホームズの立場に置き換えて想像している」感じ に思えるんです。 お二人が読んだ元の文章は全く同じ物の筈。 でも微妙な違いが発生するのは何故なのだろうか。 総ての物は「別々の頭脳」というフィルタを通すと、違う何かに変換されるのでは無いでしょうか。 これはアウトプットを伴った翻訳作業のみならず、個人が誰かの文章(或いは他の表現手段の何か)を見たときにも起こりうることでしょう。 同じ文章でも、あなたと私とでは解釈の仕方が違って当たり前。 私が書き飛ばしている 私(書き手)の思惑通りにあなた(読み手)が解釈してくれるとは限らない。 だから、誰かに自分の心づもりと違う感想を持たれたとしても、落ち込まないようにしないといけません……。 頑張ろう、うん。 資料室(著作権法に抵触しない「お姫様関連文書」)に以下の7編を追加。
小熊秀雄全集-14 童話集 作家名:小熊 秀雄 詩人・小熊秀雄が生涯に書いた全童話を収録。 トムは自分の財産を泥棒や乞食に分け与えてしまうのほどのお人好し。 ある嵐の晩、トムの家に嵐のために家来とはぐれてしまったという「南の国の姫」がやってきた。トムが親切に世話をすると、姫はトムのお嫁さんになった。 ところがこのお嫁さんがあまりに美しいので、トムは気が気ではない。畑仕事も上の空で手に付かない有様。 そこでお嫁さんは自画像を描いてこれを見ながら畑仕事をしなさいと、トムに渡す。 トムは絵を畑に飾って仕事に励む。ところが突然強い風が吹いて絵は飛ばされてしまった。 飛ばされた絵はお城の堀に。それを見た王様、余りの美しさにモデルを我が妃にと求め……。自画像 三人の若い騎士は、「この国でいちばん勇ましい騎士に(中略)可愛い王女をくれる」という王様のおふれ書きをを見て、王城まで旅をすることに。 旅の途中で無人の寺院に宿を取ることになった三人の前に、恐ろしげな娘が現れる。 二人の騎士は畏れたが、もう一人は勇気を持ってその女の正体を探ることに。 やがて娘は騎士を墓地に誘い、墓を掘らせた。 そして中からとりだした赤子の亡骸を、貪るように食べ始めた……。三人の騎士 ほか17編(計19編)の短編集。 赤いくつ 作家名:ハンス・クリスティアン・アンデルセン 翻訳者名:楠山正雄 木靴を履いた貧しい娘カレンが、いつも足の甲を赤く腫らしているのをいじらしく思った村の靴屋の奥さんは、赤い羅紗布の古切れで小さな靴を作って贈った。 みすぼらしい靴だったがこれより他に履く物のないカレンは、母親の葬式にもこの靴を履いていた。 裕福な老婦人が彼女を引き取ってくれたが、みすぼらしい赤い靴は捨てられてしまった。 ある日、美しい王女が赤い靴を履いているのを見たカレンは、心を奪われる。 堅信礼(キリスト教で信仰告白をする儀式。カトリックの場合、一部地域では成人式のような扱いとなる)の衣裳を誂えたカレンは、老婦人に連れられて靴屋へ。 ガラス張りの棚には王女が履いていたのとそっくりな靴があった。 目の悪い老婦人はそれが真っ赤な色であると気付かずに、カレンに買い与える。 カレンもそれが赤い色であるということをあえて口にしない。 堅信礼に望んだカレンだったが、儀式の間も説法の間も、赤い自分の靴のことばかり考えていた。 老婦人は周囲からあの靴が赤い色だと知らされて、初めて不作法に気付かされた。老婦人はカレンに、次に礼拝に行くときには古い黒い靴を履くようにと念を押す。 しかし古い靴と赤い靴を見比べたカレンは、その日も赤い靴を選んでしまった……。 はだかの王さま 作家名:ハンス・クリスチャン・アンデルセン 翻訳者名:大久保ゆう 原題「The Emperor's New Suit(直訳:陛下の新しい服)」 王様が好きなのは着飾ること。 それも一時間ごとに服を着がえて、見せびらかし、皆にうらやましがられるのが何より好き。 ある日ご城下に詐欺師が二人現れた。 自分たちを布織り職人で、世界でいちばんの布が作れると称して、曰く 「自分にふさわしくない仕事をしている人と、バカな人にはとうめいで見えない布なのです。」 これを聞きつけた王様、早速二人を召し出して、件の布を織らせることに。 王様からたくさんのお金をせしめた詐欺師達は早速布を織り始めました。 ところがというか当然というか、織られているはずの布は、大臣にも家来にも、王様にも見えなかった……。 シンデレラ ―ガラスのくつのものがたり― 作家名:アンドルー・ラング 翻訳者名:大久保ゆう 挿絵:ジョージ・クルックシャンク ヴィクトリア時代の英国の作家・詩人・学者のアンドルー・ラングは世界中の童話や伝承民話を集め再編集。 いわゆる昔話や神話以外にもペローやグリムなどの著作からも蒐集されている。 本編もその中の一つ。 継母と義理の姉達に虐げられていた「 王子は靴の持ち主を捜し回り、ようやくシンデレラを捜し出して妻に迎える。 原作(?)であるグリムのものと比べると、残酷表記が無くなっており、かなり優しい内容になっている。 アッシェンプッテル ―灰かぶり姫のものがたり― 作家名:グリム兄弟 翻訳者:大久保ゆう 挿絵:アドリアン・ルートヴィヒ・リヒター いわゆる「シンデレラ」の物語。 継母と義理の姉達に虐げられていた「 舞踏会に行けず、ハシバミの木の下で悲しみにくれていると、鳥たちがやってきて、ドレスや絹の靴を落としていった。 それを身につけて舞踏会に出かけたアッシェンプッテルを王子が見初める。 王子は名前や家を尋ねられるがアッシェンプッテルは答えず、逃げるようにして家へ帰る。 翌日もハシバミの下で鳥がドレスを落とし、アッシェンプッテルは舞踏会へ出かける。 その翌日に鳥が落としていったのは前以上に美しいドレスと金の靴だった。 家へ戻る時間となり、慌ててかけだしたアッシェンプッテルは左の金の靴を落としてしまう。 王子はこの靴を手がかりに、姫を捜す。 二人の義理の姉は履けない靴に足の方を合わせようとして、指を切ったり、踵を削いだりするが、ニセモノとばれてしまう。 最後にアッシェンプッテルが靴を履き、本物と知れる。 おやゆび姫 作家名:ハンス・クリスチャン・アンデルセン 翻訳者:大久保ゆう 子供が無いことを悲しんだ女性が、銀貨12枚と引き替えに魔法使いから貰った一粒の大麦。 鉢に植えるとすぐに芽を出し、チューリップのような葉を出し、チューリップのような花を付ける。 開いた花の中には親指ほどの女の子が座っていた。 おやゆび姫と呼ばれることになった女の子は、女性に愛されて成長する。 しかしある晩、母ヒキガエルにさらわれてしまう。 おやゆび姫が蓮の葉の上で泣いていると、メダカが哀れんでハスの葉の茎を囓りきり、逃がしてくれる。 川を流されたおやゆび姫はコガネムシに捕らわれるが、他のコガネムシから醜いとののしられ、ヒナギクの花の上に捨てられてしまう。 冬になり、寒さに凍えるおやゆび姫は野ネズミの婆さんに助けられる。 野ネズミと隣人のモグラの住処の間のトンネルに、凍えた燕が倒れていた。おやゆび姫は燕を介抱する。 やがてモグラがおやゆび姫を妻にしたいと申し出た……。 ボヘミアの醜聞 原題:A Scandal in Bohemia 著者名:サー・アーサー・コナン・ドイル 訳者名:大久保ゆう 初出・英国『ストランド』誌一八九一年八月号(1891年7月) ホームズシリーズ最初の短編。 女嫌いのホームズ氏が、唯一敬意をもって「the woman(あの女)」と呼ぶアイリーン・アドラー女史(Irene Adler アイリーンは英語読み。ドイツ読みではイレーネ乃至はエレーナ)が登場する一編。 民間諮問探偵シャーロック・ホームズの元に、覆面の紳士が依頼を持って訪れる。 依頼の内容は、さる高貴な人物の 写真に写っているのは、皇太子時代のボヘミア王ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギスモント・フォン・オルムシュタインと、当時の愛人アイリーン・アドラー嬢。 スカンディナヴィア王国第二王女クロティルド姫との婚約発表が近いボヘミア王にとっては、良縁の破談・国際問題となりかねない品だった。 期限は3日。 ホームズは失業中の馬丁に変装してアイリーンの身辺を探り、ゴドフリィ・ノートンという弁護士が彼女に付いていることを突き止める。 アイリーンとゴトフリィの後を付けたホームズは、たどり着いた聖モニカ教会で、彼らの結婚式の立会人を務めることとなった。 その晩、浮浪者に変装したホームズは、ケンカ騒ぎに乗じてアイリーンの家への潜入。 ワトソンと示し合わせてニセの火事を起こし、目標物の在処を確認する。 作戦の成功を確信したホームズがベーカー街に戻ってくると、見知らぬ痩躯の青年が彼に挨拶をした……。
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