∴ 一人では食べきれない程のチョコレートは二人で食べるのです。

ベルの音がした。
夜具から伸びる節くれ立った手は、震えながら時を告げる目覚まし時計ではなく、小皿に取られた一粒のチョコレートに伸びた。
金属光沢を帯びた包装紙は、半ば夢の中の指先から、つるりと滑り落ちた。
薄闇の中に行方の知れなくなったそれを、手探りで探す。
冷えた指が、柔らかく、温かいものにふれた。
それは強張った手のひらを開かせ、その中心に冷えた小さな固まりをのせた。
「不器用」
小さな声と含み笑いが、窓辺に移動する。
古びたカーテンが酷い軋み音を立てながら開かれた。
夜具の隙間から覗くと、朝日の中に彼女の背中の影が立っていた。
喉の奥に、甘い香りが広がった。

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……なんて書くと、ヒジョーにかっこよいですが、
現実はというと、
朝日の中の影はドラム缶のようなぶっとい寸胴体型であり、
夜具はせんべい布団なワケで。

つまり、我が家の朝の風景なのであります。

目覚めの悪い旦那の脳味噌に、強制的に糖分を送り込んで、
どうにか再起動させるための手段として、
チョコレートの摂取が最適なのです。



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